知った気になれるコーヒーノートCOFFEE NOTE

Chapter 02 — Roast

第二章 焙煎

生豆に熱を入れて、香り・甘み・色をつくる工程。浅いほど 豆の個性、深いほど 焙煎の個性 が前に出る。

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01なぜ焙煎で味が変わるのか

生豆はそのままだと青臭く、コーヒーの香りはまだ無い。熱を入れると メイラード反応 で糖とアミノ酸から香り・色・うま味が生まれ、カラメル化 で糖が甘香ばしさに変わる。同時に、酸や渋みの元になる クロロゲン酸 が分解されていくので、深くするほど酸が引き、苦味とコクが前に出る。だから「浅いほど豆の個性、深いほど焙煎の個性」になる ── これは香りを足す反応と、尖りを削る分解が、同時に進む差。

図解

焙煎の進行:豆温と時間

豆温が上がるにつれ主役の反応が移っていく。約9分の 1ハゼ から先が “焙煎度” の世界。ここで止めれば浅煎り、進めるほど深煎り。

乾燥期 メイラード 発展期 100150200 豆温℃ 036912 時間(分) 1ハゼ 2ハゼ
乾燥期(水分が抜ける)メイラード(香り・色)発展期(甘み・ボディ)

02焙煎の進行:豆の中で起きること

豆温が上がるにつれ、別の反応に主役が移っていく。鳴る “ハゼ” の音が焙煎度の目安。

1
乾燥期 = 〜160℃(吸熱)
水分が 10%→2% へ抜ける。色も香りもまだ薄い、準備の時間。豆が黄色く色づいたら(≒5〜6分)次の合図。
2
メイラード反応 = 120〜170℃
糖とアミノ酸が結びつき、香り・色・うま味の “骨格” ができる。コーヒーらしい香ばしさの大半はここで生まれる。
3
ストレッカー分解(メイラードと並行)
アミノ酸が分解してアルデヒドやピラジン(香気成分)に。CO₂ が放出され、ナッツ・ロースト香の素になる。
4
カラメル化 = 170℃〜
糖そのものが分解して甘香ばしさ。進めすぎると焦げ・苦味へ変わる。
5
1ハゼ = 196〜205℃(≒9分)
水蒸気とCO₂が弾けてパチパチと鳴る。ここから先が “焙煎度” の世界。
6
発展期(1ハゼ後 ≒1.5〜3分)
酸が減り、甘味とボディが決まる。この長さ=発展時間が焙煎の決め手。
7
2ハゼ = 225〜230℃(≒11〜12分)
細かい音とともに油が表面へ。深煎り(フレンチ〜イタリアン)の領域。

03覚えておくキー温度

数字は “だいたい” でいい。順番と前後関係のほうが大事。

120〜170
メイラード反応(香り・うま味の骨格)
170℃〜
カラメル化(甘香ばしさ→苦味)
196〜205
1ハゼ(焙煎度の起点・≒9分)
225〜230
2ハゼ(深煎りの領域・≒11〜12分)

1ハゼ前で止めれば浅煎り(0ハゼ)、1〜2ハゼの間で止めるか、2ハゼまで進めるかで中〜深が決まる。

04進行を読む2つの数字:RoR と 発展時間

プロは温度の “絶対値” だけでなく、上がり方と最後の長さを見ている。

RoR上昇率
豆温が1分あたり何℃上がるか。焙煎が進むほど自然に落ちていくのが正常で、途中で再加速(フリック)すると焦げ臭が出やすい。高めだと 明るくフルーティ、低めだと チョコ・ナッツ寄り
発展時間development
1ハゼ→煎り止めまでの時間。全体時間に対する比=DTR。長い=酸が減り甘み・コク、短い=酸が残り明るい。同じDTR%でも総時間が違えば味は変わる。
煎り止めドロップ
豆を冷却に落とすタイミング。狙う焙煎度・色・香りの “ここ” で一気に止める。数十秒の差で別の味になる。
黄変点イエローイング
乾燥が終わり豆が黄色くなる点(≒160℃・5〜6分)。ここまでの組み立てが後半の伸びを決める、最初のチェックポイント。

05焙煎度は 8段階

浅い → 深い の順(日本式・米国式の代表名)。明るい酸からコクのある苦味へ、味の主役が移る。

ライト / Light
いちばん浅い。明るい酸・穀物っぽさ。豆の素性がそのまま出る
シナモン / Cinnamon
まだ浅い。酸が主役で、香ばしさは控えめ
ミディアム / Medium
酸とナッツ・甘みのバランス。産地の個性が分かりやすい
ハイ / High
中煎り。甘みが出て、酸はやや落ち着く
シティ / City
1ハゼ終わり〜。甘みとコクが乗る、日本で定番のゾーン
フルシティ / Full City
2ハゼ入口。苦味とボディが主役に。酸はだいぶ落ち着く
フレンチ / French
深煎り。強い苦味・スモーキー、表面に油が浮く
イタリアン / Italian
いちばん深い。炭のような苦味で最も濃い。豆差は消えていく

焙煎度を変えても、カフェイン量はほぼ変わらない(深煎りでわずかに減る程度)。

06浅煎り ⇄ 深煎り:どっちの “個性” か

同じ豆でも、浅いか深いかで主役が入れ替わる。

浅煎り

主役は 豆そのもの:明るい酸・フルーティ・産地差

密度が高く締まっていて 味が出にくい

酸◎・甘△・苦×・ボディ軽め

湯温は高め・やや細かめで しっかり引き出す

深煎り

主役は 焙煎:苦味・コク・香ばしさ

多孔質で脆く 味が出やすい

酸×・甘○・苦◎・ボディ重め

湯温は低めでもOK・出過ぎ(苦味)に注意

焙煎度=“味の出やすさ”。浅いか深いかで、湯温と挽き目を合わせて変える。

図解

焙煎機のしくみ(3タイプ)

熱の与え方が違う。直火=炎が直接あたる(伝導)、半熱風はドラム+熱風(伝導+対流)、熱風は熱風で豆を舞わせる(対流のみ)。青い矢印=熱風の流れ。

直火式伝導+直火 半熱風式伝導+対流 熱風式対流のみ
炎(伝導熱)熱風(対流)

07焙煎機の種類:熱の与え方が違う

豆をどう温めるかで、出る味が変わる。伝導=接触で外から焼く/対流=熱風で包んで焼く。

直火式
穴あきドラムに炎が直接あたる。伝導熱が主。香ばしく力強い/ムラに注意
半熱風式
ドラムを熱しつつ熱風も通す。伝導+対流のバランス型で、最も一般的
熱風式
熱風で豆を舞わせる。対流のみ。豆にあたらず均一・クリーン・速い

08熱の入り方で味が変わる理由

同じ豆温でも、表面が先に焼けるか、全体が均一に進むかで残る味が違う。

伝導寄り(ドラム・直火)

接触点から熱が入り 表面が先に高温

メイラード/カラメル化が強く出る

→ ボディ・コク・甘さ・香ばしさ

対流寄り(熱風)

熱風が 全体を均一に包む

ムラなく穏やかに進む

→ クリーン・繊細な酸・華やかさ(浅煎り映え)

丸さ・コクが欲しければ伝導寄り、明るさ・クリアさが欲しければ対流寄り。

09焙煎が進むと、成分はこう動く

深くするほど “尖り” が減って丸くなるのは、酸の元になる成分が分解されていくから。

クロロゲン酸(酸・渋みの元)浅で約半分(45〜54%)、深では8〜9割が分解 → 深いほど穏やかに
明るい酸(クエン酸 等)浅煎りで強く、焙煎が進むほど減っていく
メラノイジン(褐色・コク)メイラードで生成。深いほど増え、ボディと色を作る(焙煎豆の10〜18%)
CO₂(ガス)ハゼ以降に大量発生。焙煎後の数日〜2週で抜けていく
カフェイン焙煎度ではほぼ不変(深煎りでごくわずか減)

10焙煎してから、いつ飲むか(ガス抜き)

焙煎直後はCO₂が多すぎて、お湯がはじかれ味がうまく出ない。少し休ませてから飲む。

焙煎当日〜2日
ガスが暴れて抽出が安定しない。膨らみは派手だが味は出にくい
浅煎り
ガス抜けが遅め。7〜14日休ませると酸が落ち着きクリアに
中煎り
5〜10日あたりが目安。バランスが整う
深煎り
多孔質で抜けが速い。3〜5日で飲み頃に入る

ざっくり「焙煎後 4〜14日」が飲み頃。開封後は酸化が進むので、密閉して早めに使い切る。

11焙煎度に合わせた 湯温・水・淹れ方

“味の出やすさ” が違うので、抽出側を焙煎度に寄せる。同じ淹れ方を使い回さない。

浅煎り(出にくい)

湯温 高め(90〜93℃)でしっかり引き出す

挽き目 やや細かめ・接触長めでOK

硬度低め〜中の水だと酸がクリアに出やすい

深煎り(出やすい)

湯温 低め(80〜88℃)で苦味の出過ぎを防ぐ

挽き目 やや粗め・手早く落とす

出し過ぎ=渋み・エグみに直結するので短め

浅は“足りない”を疑い熱く長く、深は“出過ぎ”を疑いぬるく短く。迷ったら一度に一つだけ動かす。